「台湾とウクライナ 挑戦する権威主義」(読売国際会議)

2023年1月16日「台湾とウクライナ 挑戦する権威主義(読売国際会議)」

第一部「今そこにある紛争の危機(台湾とウクライナ)」

パネリスト

 

ロシア・ウクライナ戦争の教訓

  • 抑止が失敗した

なぜロシアの侵略を抑止できなかったか

  • 軍事力を行使することの成功体験があった(何度も)
  • ロシアが侵略に伴う損失を過小評価した
    • プーチンの世界観
      • 領土拡張への意志、ロシアとウクライナは一体
      • 軍事的、経済的合理性を軽視(NATOの拡大が原因ではない)
    • ロシアの軍事力を過大評価(世界の専門家も同様)
    • ウクライナの軍事力を過小評価
  • 米国や西側諸国が侵略コストを明示できなかった

ウクライナ戦争の今後は?

  • ウクライナ側の認識
    • 時間は我々に味方している
    • 長い時間戦ってでも領土を奪還する決意
    • NATOの支援への期待(戦車、戦闘機、長距離ミサイル)
  • ロシア側
    • 時間は我々の味方をしている
    • 支援国の足並みの乱れを期待
    • さらなる動員も可能

 

習近平の使命

  • 中国の国際舞台での役割を強化する=共産党の正当性の強化
    • 外国の圧力を跳ね返す
  • 「領土保全
    • 台湾を武力で統合することは外国では議論を呼ぶが北京では論争を呼ばない
    • 領土拡張の野望を軽視してはならない
      • 軍のリーダーを党の中央軍事委員会に登用
    • 台湾がなくても習近平は権力を維持できる=習近平の弱さの表れではない
  • 長期的な思考を持っている 
    • 現在はその長期的思考の終点であり、可能であるなら早くやりたい

 

日本の防衛政策について

防衛費の増加、日米協力の強化は重要だが、より本質的な論点は

  • 作戦上の影響がある必要がある 平時と戦時の連続性
    • 戦時に役立つ装備や訓練が必要
      • 中国のA2ADの中では空母は抑止力にならない
    • 日米が直接台湾に関わる覚悟を示すことが必要
    • 戦時計画が必要(立案に半年以上かかる)
  • 中国に日米の防衛力強化を中国が認識できる必要がある 
    • こっそりやっても意味がない、戦争が始まってからでは遅い
  • 戦争が始まる前に抑止を行わう必要がある 
    • 「もし戦争が始まったら支援する」では遅すぎ

 

  • 日米の劣勢をどのように覆し、中国の現状変更を許さないような拒否能力を構築する
  • 共有された利益に基づく同盟関係

 

 

 

中国のA2ADに対応できるのか

  • アメリカの対応は遅すぎる 
    • 10年以上も議論しているのに実際の行動が遅すぎる
    • 緊急性、切迫感を持っていない
    • 強靭化=冗長力を強化し、A2AD圏内での作戦行動できるようにする
  • 基地の強靭化も不十分
    • 嘉手納基地が使用不能になれば台湾に対する作戦行動は不可能になる=中国の勝利
  • 日米台の協力が絶対条件
    • 日米の参戦こそ抑止力
  • 必要なこと
    • 真実に基づく説得、十分な弾薬、迅速な作戦行動の開始準備

 

ウクライナ戦争から得られる教訓

  • コミットメントの重要性
    • 自らの手を縛る 事前に伝える 
  • ウクライナと比較すると戦争の準備は不十分
  • 指導者は個人のイデオロギーに基づいて行動してしまう 
    • 指導者以外の人に合理的な計算を促す
  • 中国軍はロシア軍より強い
    • ロシア軍苦戦の理由(弾薬不足、指揮統制の混乱、兵站の不備)は習近平体制において改善されている
    • 台湾侵攻の準備を着実に整えている
      • 組織改革が完成しつつあり、現在は演習に力を入れている
  • 経済面は異なる
    • 中国は経済制裁への強靭性を強化している
    • 経済制裁の足並みが乱れる可能性が高い
      • ロシアには制裁してもいいけど中国には制裁したくない国は多い
    • 一方で事前には想定できないほどロシアとの関係は切り離すことはできた
      • 戦争を始めればそんな国で企業は活動できない

抑止とは

  • コストが高く、トレードオフが必要になる 
  • しかし戦争よりはマシ 
    • 戦争が起きることと比べるとテスラがどうとか、iPhoneがどうとか関係ない
    • 数千万人が死に、大不況になり、核戦争にさえなるかもしれない

 

日台関係 

  • 軍事作戦上の影響がないことはやるべきでなはい
    • 中国を怒らせるだけでは意味がない
  • 台湾の人々の戦う意欲を高める、日米の台湾へのコミットメントが高まることには意味がある

軍拡競争の行方

  • 日米に勝機があるのか、政治体制の違い、中国は合理的な政策判断を行なっている、ソ連(ブレジネフ)の失敗を回避した 

 

経済制裁の効果

  • 権威主義体制でも多様な利害が存在する、経済エリートは戦争を望まない、中国はロシアと比べて世界経済との結びつきが強い

 

www.youtube.com