日本の近代思想
1 伝統思想と西洋思想の葛藤
近世と近代の連続性
→近代的な政治意識の発生
「もののあわれ」という心情的な動きを肯定的に取り上げる
→封建道徳から人間性を解放
安藤昌益
封建制度を全面的に否定
本多利明
藩と藩の交易を提唱する
近世と近代の不連続性
MODERN
「近世」「近代」「現代」の三つの訳がある
ルネサンス以降の西欧の歴史の展開を表す言葉
近世(江戸)と近代(明治)の間の断絶
医学
o 古医方
伝統的な李朱医学(後世方)の思弁性を批判して成立
「親試実験」をモットーとして経験を重視
人体解剖も実施
麻酔の実験に成功
o 明治の医学
西洋医学を受容
ジェンナー、コッホ、パスツールなど
西欧思想の受容のために近世の思想が成熟させたわけではない
両者の異質性
近世後半における西欧の影響
古医方による人体解剖に刺激を受けて、『解体新書』を生み、蘭学の成立を促す
明治思想の二重構造
西欧思想と伝統思想の二重構造
西周、加藤弘之、西村茂樹、中村正直などの明治初期の啓蒙思想家
思想形成期において儒教を中心とした近世的教養を身につけ、多くは維新後、明治政府の官僚として近代国家を構築するために必要な政治や法律や教育にかんする西洋の知識を翻訳紹介
新知識の体得者であると同時に、その内奥に儒教の素養を血肉化した人々
ルソーの『社会契約論』を翻訳紹介し、自由民権運動に多大な影響を与えた
『民約和訳』
荘重な漢文で草される
英文学と漢詩
西洋思想+伝統思想
思想の内容の進歩性と反動性といった評価基準は無意味
どのように進歩的な思想でも、主体の内奥に息づく伝統との対決を経ていなければ、優れたものとして評価することはできない
どのように反動的な思想でも、西洋との鋭い対決において主体的に選び取られたものであるならば、高く評価すべき
明治期におけるキリスト教の役割
キリスト教と伝統思想の鋭い対立に向き合う
2 共同体的倫理の解体
社会構成と産業構造の変化
新しい経済システム、法制度、文化、思想などを受け入れると同時に近世から受け継がれた様々な伝統を解体
農村共同体の解体
徳川幕藩体制
年貢を確実に収納するために、田畑の売買を禁止して小農(自作農)を保護するとともに、支配の末端に位置する名主(庄屋・肝煎)を中核として共同体の相互扶助と連帯責任を維持しようとした
名主は確実に租税を収めるために、灌漑設備の開発、農機具の改善、商品作物の奨励、文化の向上などに取り組む
明治の新政府
近代的な財政を確立するために、地券を発行して土地の売買を解禁した(地租改正)
→農村はしばらく名望家(旧名主などの豪族)のもとに共同体的な秩序を維持
↑自由民権運動を支えた階層
次第に二極化
- 大土地を所有する大地主
→製糸業などの産業を興し資本家となり、土地を離れ都市に移住する(寄生地主)
- 土地を失った小作人(水呑百姓)
→大都市の工業労働者としてプロレタリア化
新たな道徳を創出する試み
日本弘道会を興し、儒教に西洋哲学を加味した新しい共同体的な倫理を構想し、普及につとめる
その影響はわずかだった
家族国家論を中核とする国民道徳を提示
あくまで疑似的なものにとどまる
孤独な人々
都市労働者
共同体的な秩序において純然とした個人としては現象しない
関係性
※西欧的な個人
絶対神と個人の直接対面
自律
『月に吠える』萩原朔太郎
「地面の底の病気の顔」
世界水準との接続